瀬川 英史氏

Eishi Segawa

“欲しいクオリティに素早く辿り着けるソフト”

【プロフィール】
実に年間100本を超えるという、 膨大な数のCMプログラムに携わる多忙な作編曲家。 日産自動車株式会社やマツダ株式会社、 本田技研工業株式会社、 ソニー、 パナソニック、 キャノン、 資生堂など著名企業のCMも数多く手掛ける瀬川氏は、 2005年末に新たなホームグラウンドとしてRoger Studioを設立。

シベリウスとの出会い

「Sibeliusはヴァージョン2がリリースされてすぐに使い始めました。その前(Sibeliusに出会う前)は他のソフトを一年くらい使って いましたが、 当時は譜面を手書きでも書いていました。CM音楽は尺が短いのでなければなくてもなんとかなっていましたが、あったほうが 早いのでもっと使いやすい ソフトはないかなと探していたところ、ミュージシャンの友達がSibeliusを使っていて使い勝手が良いって 聞いたので試してみました。鍵盤弾きながらの 入力がシーケンサーのステップ打ちと雰囲気が近かったんですよ、それでこっちのほうが 良さそうだとこのソフトを使い始めました。」

瀬川 英史氏現場で活躍するシベリウス

「格段に他のソフトと比べて良いところは簡単なところですね。現場(スタジオ)で使う譜面は特殊な機能よりも普通に手早く 見やすい楽譜をさらっと 作成できることのほうが重要なポイントになりますね、時間の節約においてもそういえるでしょう。 レイアウトの格好をつけていくのも簡単で早いですね。 CM音楽を作るときは演奏者の方に譜面を渡す場合、渡す相手によってレイアウト を変えています。弦楽器の演奏者には音符の玉が見えやすいようにレイアウトしたり、 リズムセクションの人達に渡す場合は1段4小節で まとめたり、そういったことを心がけて譜面作成をしていますから、このレイアウトが楽なのは助かります。」と、 常に現場での プレイヤーが心地よく演奏できるよう譜面への気配りを絶やさない瀬川氏。「コード記号も入れやすいです、これは人によるのかも しれませんけど。 ショートカット覚えてしまっていますしね、手が勝手に覚えています。基本的にどのソフトでもできることは そんなには変わらないんでしょうね。時間さえかければ。 ただ、欲しいと思うクオリティにどっちが素早く辿り着けるという点で はやはりSibeliusですね。」

Pro Toolsとの連携

Pro Tools 7.3の新機能「Sibeliusへ送る」は、現場ではかなり重宝されている機能の一つである。 「スタジオでヴォーカルの譜面 だけプリントアウトする時もありますが、とても早いです。その機能が つく前はPro ToolsでSMF保存して、Sibeliusで開いていました。 例えば16トラックがあり、SMF保存する 前にヴォーカル以外のトラックをミュートしないと他のも出てしまうじゃないですか、もちろん 後で 消せば良いんですけど。今だと選択したトラックだけ直接Sibeliusに送信できるので、この連携コマンド はものすごく助かって います。プリプロのときも、特にこのスタジオで録音するときは一度にレコーディング するミュージシャンは一人なので、その一枚だけ プリントアウトすればそれで済むんですよね。しかも前の日に絵 (CM映像)の変更があって、それに合わせて次の日レコーディングと いう話もよくありますしね。こういうソフト が使えれば変更箇所をその夜考え直すこともできます。そういう意味でも便利です。」 CM音楽制作現場では こういった最終段階での変更も珍しくはないようだ。

Pro Toolsで作ってSibeliusに送信して使うことが多い。「Sibeliusで先にスケッチを作ってから オーケストレーションする方が 良い場合もありますが、尺をフレーム単位できちんとテンポ割り出してから でないとスコア出せないことも多いので、主にはPro Tools を先に使用してからSibeliusで作業しますね。 Kontakt Player (Kontakt Gold)で再生させることもありますよ。」

譜面からの作曲

「シベリウスで譜面を書き起こしてからシンセサイザーのオペレーターにMIDIデータとして渡す作曲家さんもいらっしゃいますよね。 アカデミックな作家さんは譜面から作り上げるほうがかえって仕事が早いでしょう。テンポでも何でも書き込めばその場で変わりますし、 デモテープを必要としない仕事の場合は特に。」用途により音楽制作のアプローチを変えることにより、曲の仕上がりも変わってくる。 「譜面からスケッチを起こして曲を作る曲の感じとMIDI入力でスタートするのとでは違いが出ます。MIDIだけで完結させる場合キー (調号)はそれほど気にしませんね。シンセのストリングスにE MajorでもE♭Majorでも大差はないのですが、現場レベル(生演奏) だと変わってきます。フルートでも高いG#はGナチュラルに比べて生の場合少し音が出しづらいとか、ね。だから現場で演奏者のことを 考えるときはやはり譜面から作る場合が良い場合が多いです。弦楽器も管楽器も。管楽器の場合は Sibeliusの移調の機能を使用して楽譜 を作成します。」